
- 日本語はなぜここまで難しいのか?ー英語話者が直面する壁ー
日本語を習得するうえで必要とされるのは、単に語彙や文法を覚えるといった語学スキルにとどまりません。真に日本語を理解し、正しく運用するためには、「文脈を読む力」「日本特有の文化や価値観への理解」「微妙な表現の違いを察知する観察力」など、さまざまな能力が総合的に求められます。
例えば、「お疲れ様です」という一言の背景には、日本の労働文化や人間関係に根ざした意味合いが含まれており、それを単に“Good job”と訳してしまっては、本来のニュアンスが失われてしまいます。
こうした多層的な要素を同時に扱う必要があることから、日本語は英語を母語とする人々にとって、非常に難解で挑戦的な言語とされています。
- なぜ日本語は難しいのか?
1. 三つの文字体系
日本語には、「ひらがな」「カタカナ」「漢字」という三つの異なる文字体系が存在します。それぞれに役割と使い分けがあり、翻訳の際には読み手の理解度や文脈に応じた表記の判断が必要です。英語のようにアルファベット一つで済まないため、まず“読む”こと自体が大きなハードルになるのです。
• ひらがな:日本語の基本的な文法要素を表す文字。助詞や語尾に頻出。
• カタカナ:外来語や擬音語、強調表現に使われます。
• 漢字:語彙の核を担い、意味を端的に伝える表意文字。読み方は一つではなく、文脈により異なる場合があります。日常生活で使われる漢字は約2,000字以上で英語にはない“記憶+解釈”の負担が大きいと言われています。
例えば、「日本(にほん)」という言葉には、「日=太陽」「本=起源」のような意味が含まれます。このような言語構造を把握せずに翻訳を行うと、情報の本質を見失う恐れがあります。
2. 英語と異なる文法構造
英語は「主語→動詞→目的語」の順番ですが、日本語は「主語–目的語–動詞(SOV)」の順番を持ち、動詞が文の最後に置かれます。文の最後まで読まないと意味が分からないため、英語話者には理解しづらい構造です。英語(SVO)に慣れている人にとっては、この構造自体が翻訳時の混乱のもととなります。
例:
• 英語:I eat sushi.
• 日本語:私は寿司を食べる。
さらに、助詞の使い分け(「は」「が」「を」など)にも明確なルールがあり、意味の違いやニュアンスを正確に捉えるためには高い理解力が必要です。
3. 発音の落とし穴
発音自体は英語よりもシンプルですが、日本語には「ピッチアクセント(高低アクセント)」があり、発音の違いによって意味が変わってしまいます。
例:
「はし」は、言い方によって「橋」「箸」「端」など、全く違う意味になります。
英語話者がこのアクセントの違いに慣れるには、相応の時間と訓練が必要です。- 翻訳の質を高めるためのポイント
プロの翻訳者が日本語から英語への翻訳(和文英訳)において高品質な成果を提供するために行っているのは、単なる言語の置き換えではありません。原文の意図や背景にまで踏み込み翻訳作業を行っています。
ここでは、翻訳の精度を高めるためにプロが実践している代表的なアプローチをご紹介します。高品質な翻訳を届けるためには以下の視点が非常に重要です。
1. 文脈と文化的背景を理解する
同じ単語でも、場面によって意味が変わるのが日本語の特徴です。
例:「いつみ」という言葉は、人名にも地名にもなり得ます。翻訳する際にはこうした背景情報の把握が不可欠です。
また、「お疲れ様です」のような日常表現は、直訳ができない文化的なニュアンスを含みます。こうした表現は、単語の置き換えではなく、文化理解に基づいた“意訳”が求められます。
2. 直訳ではなく“伝わる”翻訳を目指す
表面的な意味にとらわれず、伝えたい意図や感情を英語として自然に表現することが大切です。
NG例(直訳):「猿も木から落ちる」
OK例(意訳):「Even experts make mistakes(達人でも間違うことがある)」
3. 習得のための実践習慣を持つ
• 翻訳演習:ニュース記事、ブログ、日記などジャンルを問わず翻訳練習を行いましょう。
• レビューとフィードバック:第三者の視点で修正点を指摘してもらうことが、精度の向上につながります。
• アニメやドラマの活用:日常会話のリアルな表現や文化的な言い回しを自然に学ぶ素材として効果的です。- まとめ
日本語は、美しさと奥深さを併せ持つ魅力的な言語である一方で、その構造や文化的背景の複雑さから、英語話者にとっては非常に高い壁となることも事実です。
翻訳においては単なる言語の置き換えではなく、意図や感情までを正確に届けることができる“プロフェッショナル”の力が必要となってきます。
当社には、こうした高度な言語スキルと専門的な知識を持ち合わせた経験豊富な翻訳者が多数在籍しています。
グローバル展開を見据えた高品質な翻訳が必要な際は、ぜひお気軽にご相談ください。