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翻訳会社依頼時に注意!英語や中国語、スペイン語/ポルトガル語の地域による違い

同じ言語でも、使われる地域によって違いが見られます。たとえばイギリス英語とアメリカ英語。どちらも「英語」という言語にもかかわらず、スペルや単語に違いが見られます。

このような地域による言語の違いは、英語以外の言語にも当てはまります。なかには、地域差によって表記や意味がまったく異なるケースもあるため、地域差の理解は国際的なビジネス展開において非常に重要です。

この記事では、英語や中国語、スペイン語、ポルトガル語の地域による違いを解説します。

各英語の違いと特徴

まずは英語について、以下の2つを紹介します。

●アメリカ英語

●イギリス英語

それぞれの英語について、詳しく見ていきましょう。

アメリカ英語

アメリカ、メキシコ、日本、韓国などで話されているのがアメリカ英語です。

英語を母国語とする人の中で、もっとも話者数が多い言語です。

日本の学校教育では、たいていの場合アメリカ英語を用います。そのため日本人にとって馴染みのある英語といえるでしょう。

イギリス英語と比較すると「サッカー」と「フットボール」のように、同じものでも表記がまったく異なる単語があります。

以下はその一例です。

日本語アメリカ英語イギリス英語
サッカーSoccerFootball
1階1st floorGround floor
ポテトチップスpotato chipscrisps
エレベーターElevatorlift
Fallautumn

ただ、ある程度英語が理解できる人であれば、アメリカ・イギリス英語どちらでも通じるケースが多いです。

イギリス英語

イギリスを始め、香港、インド、南アフリカなどの地域で使われているのがイギリス英語です。

多くの国や地域で使われているのは、植民地時代の歴史的背景が影響しています。

イギリス英語は独自のスペル表記があります。

たとえば「center(センター、中心)」という単語に含まれる「er」は、

イギリス英語では「centre」と表記し「er」と「re」が入れ替わります。

「recognize(気づく)」という単語は、イギリス英語では「recognise」と表記します。

その他の例は以下をご覧ください。
日本語アメリカ英語イギリス英語
「er」/「re」centercentre
「ze」/「se」recognizerecognise
「or」/「our」colorcolour
「og」/「ogue」catalogcatalogue

イギリス英語には見慣れない表記もあるかもしれません。

ただ、ビジネスシーンではアメリカ英語が使われる傾向なので、それほど懸念する必要はないでしょう。

各中国語の特徴

広大な国土を誇る中国。14億人を超える人口規模は、多くのビジネスチャンスがあるといえるでしょう。

事実、多くの日系企業が中国と提携・参入し、ビジネスで成功を収めています。

こうした背景から、正しい中国語翻訳が重要なのはいうまでもありません。

ここでは、以下の2つを紹介します。

●簡体字

●繁体字

違いを簡単にまとめると、伝統的な文字が繁体字で、繁体字をシンプルにしたのが簡体字です。

それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

簡体字

伝統的な漢字表記を簡略化したのが簡体字で、画数が少なくシンプルな文字を用いるのが特徴です。

中国本土のほか、シンガポールやマレーシアで使われています。

繁体字と簡体字を比較してみましょう。

日本語繁体字簡体字
電話番号電話號碼电话号码
営業時間營業時間営业时间
いらっしゃいませ歡迎光臨欢迎光临

比較してみると、簡体字は繁体字を元に簡略化しているのがわかります。

ただ、なかには漢字そのものが変わるケースもあります。

たとえば「携帯電話」は、繁体字では「手機」と表記しますが、簡体字では「手机」と表記します。

繁体字

昔ながらの伝統的な漢字を用いるのが繁体字で、台湾や香港、マカオで使われています。

(さらに繁体字は地域によっても使われている漢字が違うため、注意が必要となります。例:台湾系繁体字、香港系繁体字など)

画数が多く複雑な繁字体ですが、漢字のへんやつくりから意味を推測できるケースもあり、日本人にとっては比較的馴染みやすい字体といえます。

たとえば、洋服の「ワンピース」は、繁体字では「洋装」と表記します。

一方、簡体字は「连衣裙」と表記します。繁体字は「洋」の「装い」という漢字から、意味を想像しやすいでしょう。

繁体字を母語とする人の中には、繁体字ならではの漢字の美しさや、伝統的な漢字を使っていることを誇りに思っている人も多いです。

また、中国に対してネガティブな感情を抱いている人にとっては、簡体字を不快に思う人もいます。

「繁体字か簡体字か?」の選択を間違えて翻訳してしまうと、悪い印象を与える可能性があるので気をつけましょう。

各スペイン語の特徴

5億人近くの話者がいて、スペインのほか、中南米やアフリカなど広い範囲で使われているのがスペイン語です。

スペイン語は、大きくわけて2種類あります。

●エスパニョール…EU、アフリカで使われているスペイン語

●カステジャーノ…南米で使われているスペイン語

地域によって例外もありますが、ここでは上記の2つを紹介します。

エスパニョール

スペインのほか、アフリカで使われているのがエスパニョールです。

南米で使われるスペインであるカステジャーノと比較すると、単語の表記や文法に違いが見られます。

以下、単語表記の比較一例です。

日本語エスパニョールカステジャーノ
携帯電話teléfono móvilcelular
運転するConducirmanejar
あなたvos

文法の違いで代表的なのが「vosotros」と「ustedes」です。

スペインで使われるエスパニョールは、二人称複数形として「vosotros」を使います。

一方、中南米のスペイン語では三人称の「ustedes」を使います。

カステジャーノ

カステジャーノは、ペルーやコロンビア、アルゼンチンなど南米の国々で使用されています。

スペイン語ながら英語の影響が見られ、たとえばバナナはそのまま「banana」と表記します(エスパニョールではplátano)。

カステジャーノで気をつけたいのが「coger」という単語です。

エスパニョールでは「取る」「つかむ」といった、日常生活でごく自然に使われる単語ですが、カステジャーノでは性的な表現になります。

また、スペイン国内にもカステジャーノを使う人がいるため「スペイン人=エスパニョールでCogerを使ってOK」とは限りませんので注意しましょう。

各ポルトガル語の特徴

ポルトガルのほか、ブラジル、モザンビーク、東ティモールなどの国々で2億人以上に使われているのがポルトガル語です。

ポルトガル語は、大きくわけて以下の2つに分けられます。

●ポルトガルで使われるポルトガル語

●ブラジルで使われるポルトガル語

それぞれ紹介します。

ポルトガルで使われるポルトガル語

ポルトガルで使われるポルトガル語は、人称代名詞に「tu」や「vos」を使います。

例:Tu és gentil あなたは親切です。

一方、ブラジル・ポルトガル語では「você」や「vocês」が使われます。

例:Você é gentil あなた親切です。

また、ポルトガルで使われるポルトガル語は、所有詞の前に置く定冠詞(o、a、osなど)を省略しません。

例:o seu telemóvel(あなたの携帯電話)

一方、ブラジル・ポルトガル語では定冠詞「o」を省略するケースが多いです。

ごくわずかな違いではありますが、こうした「細かな点にも配慮して翻訳しているかどうか」で、相手からの印象は大きく変わるでしょう。

また、以下のように、語彙にも違いが見られます。

日本語ポルトガルブラジル
電車comboiotrem
バスautocarroônibus
アイスクリームgeladoSorvete
携帯電話telemóvelcelular

ブラジルで使われるポルトガル語

ポルトガルの人口が約1000万人に対して、ブラジルの人口は約2億人です。「ポルトガル語」という名前ではありますが、話者数でいえばブラジル・ポルトガル語のほうがメジャーです。

また、日本で使われている教科書の多くが、ブラジル・ポルトガル語をベースに作られています。

傾向として、ポルトガル人はブラジル・ポルトガル語を理解でき、ブラジル人はポルトガル人のポルトガル語を理解できません。

同じポルトガル語でもこのような違いがあるので、翻訳を依頼する際には、相手の出身国や言語をよく確認しましょう。

翻訳依頼前には各言語の詳細を確認しよう

たとえ同じ言語でも、使われる国や地域によって言葉は変わります。翻訳会社に依頼する際は「何語の翻訳なのか」だけでなく、クライアントの国や地域まで明確にしておくといいでしょう。

翻訳文のクオリティひとつで「仕事への熱意や相手に対する誠意の伝わり方」は大きく変わります。

言語の詳細がわからない場合、翻訳対象や目的を明確にして翻訳会社にお問い合わせしてみましょう。