
- ネイティブチェックとクロスチェックの使い分けー翻訳品質を左右する2つの視点ー
「ネイティブチェック」や「クロスチェック」という言葉を耳にされたことはありますか。これらは翻訳業界で使われており、翻訳の品質管理に関する工程です。
今回は「ネイティブチェック」と「クロスチェック」の違いについて説明します。
今すぐには必要性を感じられていなくても、将来的に翻訳会社へのアウトソーシングを検討される際に押さえておきたい両者の違いや実際の現場でのニーズについてもお伝えします。
- ネイティブチェックとクロスチェックの違い
「ネイティブチェック」と「クロスチェック」はいずれも翻訳の品質を支える工程です。どちらも仕上がりの精度を高めるために重要ですが、それぞれ目的とアプローチが全く異なることをご存じでしょうか?
ネイティブチェックとは?
伝わり方を整える「仕上げ」の工程
• チェック対象:翻訳された文章(訳文)のみ
• 担当者:ターゲット言語のネイティブスピーカー
• 目的:自然さ・読みやすさ・文化的な違和感の除去
ネイティブチェックは、その言語を母語とする人が翻訳後の文章だけを見て「ネイティブが読んで違和感がないか?」を確認するプロセスです。
チェックされる主なポイントは下記の通りです。
• 文法や綴りの誤り
• 語句や言い回しの自然さ(不自然な表現・違和感のあるトーンになっていないか)
• 対象読者にとって読みやすいか
• 文化的に不適切な表現の修正
例えば、「文法的には正しいけど、ネイティブならこう言うよね」といったように違和感を取り除く工程がネイティブチェックです。
クロスチェックとは?
「訳し間違い」を防ぐためのダブルチェック
• チェック対象:原文(ソース言語)と翻訳文(ターゲット言語)の両方
• 担当者:翻訳に精通したバイリンガル
• 目的:訳抜けや誤訳の有無を確認
クロスチェックは、原文と訳文を照らし合わせながら内容の正確さを確認するプロセスです。
主に以下のようなミスを防ぎます:
• 訳抜け(未翻訳の箇所がないか)
• 誤訳(意味が異なる箇所がないか)
• 意味の過剰追加(原文に書かれていない情報やニュアンスを翻訳の中で勝手に付け加えてしまうこと)や不要な意訳
• 専門用語や表現の一貫性
例えば、「原文では“できない”と言っているのに、訳文では“できる”になっている」といった重大なミスを見逃さないの工程がクロスチェックの役割です。- 一目でわかるネイティブチェックとクロスチェックの比較表
- 多くの企業がネイティブチェックを重視する理由
ネイティブチェックとクロスチェックはどちらも重要な工程ですが、企業担当者からの依頼が多いのは「ネイティブチェック」の傾向にあります。
理由は「ちゃんと伝わるか」「自然な表現か」「読者に好印象か」を重視する傾向があるからです。
特に以下のようなケースでは、読み手に自然に伝わるかどうかが問われます。
• Webサイトやパンフレットの英訳
• 海外展示会用のプレゼン資料
• 広報・広告文、プレスリリース
こうした「見られる・読まれる文章」には、ネイティブチェックが不可欠です。
正確さよりも「読み手にどう響くか」が重視されています。- とはいえ、クロスチェックが必要な場面も
一方で、内容の正確さが最優先される以下のような文書ではクロスチェックが重要です。
• 契約書や社内規程などの法的文書
• 技術マニュアルや製品仕様書
• 訴訟関連の通知文など
誤訳が命取りになるような文章では、クロスチェックが欠かせません。- 「両方」行うのが理想的
多くの翻訳会社では、クロスチェックで内容の正確さを担保し、その後ネイティブチェックで自然な表現に仕上げるというダブルチェック体制をとることが理想とされています。
ただし、納期やコストの制約でどちらかのみを選ぶ必要もあるかと思います。
その際は今回ご紹介したネイティブチェックとクロスチェックの違いを参考に一度ご相談ください。- 確実に届けるために
企業が発信するメッセージは、単なる情報ではなく、製品やサービスの価値、そしてブランドそのものを体現しています。
その言葉が正しく、自然に、意図通りに届くことは、信頼を得るうえで欠かせません。だからこそ、翻訳の最終工程には、専門分野に精通したプロによるチェックが必要です。
「読み手にきちんと伝わるかな?」と不安に感じたら、ぜひ一度ご相談ください!